戦闘機屋さんおすすめの一冊「飛行のはなし」 ゆるいタイトルに隠された空戦技術のガチ研究本
こんにちは、カラスです。
読書の秋に合わせて書評記事とか書きたくなったので書きます(雑)
今回紹介するのは、加藤寛一郎先生の「飛行のはなし 操縦に極意はあるか」です。
かなり古い本で昔図書館で読んだのですが、最近アマゾン在庫があったので購入しました。(無慈悲)
貴重な内容が満載の本なので、航空(というか空戦)に興味がある人のために紹介します。
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加藤寛一郎先生について
航空工学者の先生で、有名なのは「航空機力学入門」です。
航空工学やってる人はたぶんみんな知ってるんじゃないでしょうか。
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ちなみに航空機力学入門はゴリゴリに微積分して航空機の挙動を理解するスタイルなので飛行機のゲームとか作りたい人におすすめです。
打って変わって、飛行のはなしは読み物として書かれています。
加藤先生は、これを横書き(数式メイン)と縦書き(よみもの)と記述していました…
どういう本なの?
この本、航空工学者としての視点から飛行機の色々について、数式をあえて用いずにわかりやすく解説している本なのですが…
実際は、7章構成のうち6章が戦闘機によるマニューバに関する考察です(!?)
飛行機のはなしというより、ほぼ「空戦のはなし」とか「戦闘機動のはなし」なのです。
実際後に発売された文庫版はタイトルが若干変わって「飛行の秘術のはなし」になっていますが、しかしこれでもまだ控えめと言えます。戦闘のはなしです。
中身はゼロ戦やF-86における空戦機動の研究や、二次大戦中の空戦にまつわるエピソードの検証などなど…非常に興味深い内容が揃っています。
空戦機動に関して、航空工学者としての視点からの考察と戦闘機パイロットへの聞き取りによって、最適な機動を考えたり二次大戦中の神話を検証しています。
おそらく現在、世界で唯一入手可能な左捻り込み解説
ゼロ戦とか好きな人なら一度は聞いたことがあるであろう左捻り込みですが、その実正確機動に関する情報は極めて少ないです。
この本は、その左捻り込みを航空工学者としての視点から研究し、その成果が解説されています。
しかも、当時まだ存命だった坂井三郎に直接取材し、その内容を精査しています。
現在左捻り込みに関して正確に記述した市販本はたぶん加藤寛一郎先生の「飛行のはなし」だけではないかと思います。
その他、空戦における重要事項が気軽に書かれてます。
左捻り込みは日本人の大好きな必殺技で目立つ項目ですが、何気に現代の空戦で重要な事項とかも書かれてたりします。
このブログでもちょこちょこ解説してるエネルギー機動理論(制作中)とかに関する航空工学者の視点からの研究から編隊飛行まで、とにかく盛沢山です。
特に最適旋回に関する考察は興味深いので戦闘機に乗ってる人にもおすすめです。
どのような結論に至っているかは実際に読んでみてください。
なにより、搭乗やテストフライト無しに計算でここまで出せるのか…という気持ちになります。
これらの研究からは、もし航空工学者が戦闘機でドッグファイトをするとなるとこういう動きをしてくるのかと考えさせられます。
航空工学者による戦闘機の本って実は少ない
戦闘機というジャンル、どうしてもミリタリーに近いせいか学者による書籍が少ない分野でもあります。
アメリカならいざしらず、国内は壊滅的状態です。
飛行のはなしは、読み物とはいえ数少ない航空工学者によって書かれた空戦の専門書と言えます。
他の戦闘機関連の本がマニアの思い込みや単なる取材のみで書かれているのに比べ、本人の研究がそのまま収録されているというのは貴重です。
今後、こういう本が出る保証はありません。手に入るうちに一冊手元に置いておくのがいいのではないでしょうか。
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