飛行機の離発着にかかる 気象制限 具体的な確認方法解説
飛行機の離発着には 気象制限 があるという事に気付いている人は多いと思います。
今回は気象制限を確認して飛行機が飛べるのか飛べないのか判断できるようにしていきたいと思います。
飛行の時に確認すべき情報
飛行機が気にするのは主に視程とシーリング(雲底)です。
なぜ気にするかというと離着陸の時に安全が確保できなくなるからです。
視程が低い状態では計器離陸が必要になりますし飛行中に雲に入ると周囲の確認ができなくなり危険です。
また、これ以外にも風の状況や火山灰なども制限として入ってきます。
有視界気象状態
計器飛行証明を持っていない自家用操縦士の方の場合はVMC(有視界飛行状態)でしかフライトができないので飛行場の視程5km シーリング1000ftだけを気にする事と思います。
しかし、計器気象状態でも飛行可能な飛行機、旅客機に乗る人はどの数値を見ればいいのかわかりづらいことと思います。
実際計器気象状態の定義は有視界飛行状態ではないこととしか書かれていないませんね。
計器気象状態の制限
それでは計器気象状態の制限はどうなっているのでしょうか?
実は計器気象状態の気象制限は飛行場ごとに異なっています。というのも計器進入でつかえる飛行場の施設やその精度がそれぞれ異なっているのでどうしても差がでてしまうのです。
また、飛行場の制限だけでなく航空会社ごとに規定を設けていたりパイロット個人の技量によっても気象の制限は変わってきます。
とりあえず実際に気象制限を確認してみましょう。
METARを確認しよう
飛行場の気象状態に関してはMETARとして毎時間発刊されており、色々な手段で確認することができます。
パイロットなら飛行場事務所等で確認できるでしょう。
そうでない人でもインターネットで確認できます。imocwxで確認できるので見てみましょう
飛行場ごとのMETARが表示されています。例えば静岡空港なら以下の通り
METAR RJNS 151000Z 08003KT 030V100 9999 FEW015 SCT070 BKN090 20/17
Q1006 RMK 1CU015 3AC070 6AC090 A2973=
簡単に解説します。
- RJNS 最初のRJNSは静岡空港を表すコードです。
- 151000Z これは15日の10時00分(UTC)です。時刻はUTCなので+9時間して考えます。つまりこの場合19時です。一時間おきの発刊なのに00分となっているのは修正や訂正が出る事があるためです。
- 08003KT 風は080方向から3ノットです。
- 030V100 これは風向変動があるときのみ表示されます。
- 9999 視程がメートルで書かれています。指定が10キロメートル以上あるときは9999となります。
- FEW015 SCT070 BKN090 雲が低い方から順に書かれています。単位はフィートで一番下の一桁が100フィートです。BKN(ブロークン) OVC(オーバーキャスト)がシーリングとなります。今日の場合は9000フィートが雲底です。
あとの部分は省略します。
今日は視程10キロメートル以上、雲底も9000フィートと大変良い状況であることがわかりますね。
飛行場の制限を確認してみよう
今回は静岡空港の気象制限を確認してみます。
確認の際にはAIPという発行物を確認します。AIPというのは Aeronautical Information Publication(航空路誌)の事で、国土交通省が発行している文書です。
航空の運航に関する事を掲載しており、飛行場の諸元や運用に関する情報、アプローチやデパーチャの経路など様々な事が書かれています。
図書館などに置いてある物ではない上に頻繁に更新がかかるため、インターネットで閲覧するのがいいと思います。
AISの使い方
AIS Japanで確認できます。今は会員登録が必要なので会員登録してから見てください。
どうもこのAIS Japan、証明書が切れているのかセキュリティの問題ありとか危険とか表示されますが国のホームページではよくある事なので無視するしかありません。
AIPを開き、現在有効なものを選びます。
現在有効なやつは左側に●がついています。
下の場合は24 May 2018発刊が有効になっているはずです。
次に左側のフレームからpart3 AERODROMESを選択します。
するとタブが開くのでctrl+fか何かで自分の見たい飛行場を探します。
今回は静岡空港を見たいので RJNS もしくは Shizuoka と検索します。
検索して出てきたものを押すと静岡空港の諸元などが書かれたページに飛びます。
気象制限はアプローチミニマを指す事が多いので
一番下のページから自分のやりたいアプローチを探して確認します。
今回はILSアプローチの制限を確認します。
静岡空港の気象条件を見てみよう
この部分を見るとWX MINIMA と書かれておりこれが最低気象条件です。
RWY30ならCAT1の値を参照します。CAT 1とはILSのアプローチの精密さだと思ってください。
雲底の制限値
DA(決心高度)613ft DH(決心高)200ftとなっています。
DHは地表からの高さです。METARの値は計測器からの高さで表示されているのでこの200ftがシーリングの最低値です。
アプローチ方法によってはDAではなくMDA(最低降下高度)が書かれている事がありますがその時もMDAが雲底の最低値となります。
視程の制限値
視程はRVR/CMVで表記されています。
静岡空港の場合は550m
RVRというのは滑走路視距離です。離陸前とかにタワーに聞くと教えてくれます。
CMVの解説
CMVというのは地上視距離に換算係数をかけたものになります。
換算係数は飛行場の灯火によって変わります。また、この換算値も変わる事があるとか無いとか…最新のものを確認するようにしてください
進入灯および滑走路等 昼間 1.5 夜 2.0
滑走路等 昼間 1.0 夜 1.5
灯火がない 昼 1.0 夜 ダメ
静岡空港は進入灯も滑走路等もあった気がするので1.5を現況の視程に掛けます。
進入灯とは滑走路の前にあるフラッシャー自転車やナイトライダーのKITTみたいな感じで流れてるアレです。
例) RJNS 010000Z 10005KT 0400 ~
この場合現況の地上視程400m×換算係数1.5=600mでILSでの侵入が可能になります。
逆に視程が300mの場合CMVが制限値を切るので運航できないという事がわかりますね。
おまけ 視程8kmとか5kmってどんな感じ?
かなり良くないです。
視程8kmならまだ見渡せる感じがありますが視程5kmになると先の景色もかなり近づかないとわかりません。
視程5kmとなると低速機でも見通しが悪いと感じるはずです。空間識失調の危険性も出てくるのであまり飛びたくないですね。
参考 ブルーインパルスの気象制限
ブルーインパルスは各演目のセットごとに気象制限をかけており、第一区分から第四区分と通過飛行、地上滑走に分かれています。
- 第一区分 視程8km(以下第四区分まで同じ) シーリング1万ft
- 第二区分 シーリング7000ft
- 第三区分 シーリング5000ft
- 第四区分 シーリング3000ft
- 通過飛行 視程5km シーリング1500ft
- 地上滑走 これらを切る状態
ブルーインパルスに関してはアクロバットを行う関係で気象制限はかなり厳しくなっています。
視程8kmというのも飛行機の飛ぶスピードからすると余裕はありません。あと、1万ft以上に上昇する事がある場合VMCを維持する必要もあるのでこうなっているのではないでしょうか
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません