パイロットの常識 飛行前の身体チェックリスト 6項目+1

2019年11月4日航空パイロット

みなさんは自分の身体状況をチェックしながら生活していますか?

多くの人は何も気にせず過ごしているのではないでしょうか。身体状況というのは人間の能力に多くの影響を与えています。

パイロットのように身体的な不調が命に直結しかねない仕事をしている身としては普段から様々な事に気をつかわなければなりません。

一方で基準も無くただ健康を維持しろというのは難しいことです。

そこでパイロット間では自分の健康を確認するためのチェックリストのような物があります。

今回はこの自己管理に使えるチェックリストを紹介します。

フライトが無い人も何かで活用できると思うのでぜひ普段の自己管理に取り入れてみてください。

アメリカ連邦航空局の健康チェックリスト IM SAFE

アメリカ連邦航空局(FAA)がパイロット向けに身体状況のチェックリストを出しています。それがこのIM SAFE チェックリストです。

おそらくパイロット間で最も有名なのはこのIM SAFE なのではないでしょうか?

  • illness (病気)
  • medication (薬)
  • stress  (ストレス)
  • alchol (アルコール)
  • fatigue (疲労)
  • emotion (情緒)

の6つの言葉の頭文字をとったものです。これらはフライト前に確認しなければならないものです。

パイロットだけでなくこれから車を運転しようとしている人や重要な仕事がある人にも活用できると思います。

illness 病気

病気の有無はフライトにかなりの影響を及ぼします。病気の種類によっては判断力が低下したり低酸素や低圧下で悪い影響を及ぼすものもあるので注意が必要です。

例えば花粉症による副鼻腔炎などは上空で気圧が下がった時にひどい頭痛の元となったりします。

とくに航空機は途中で止まって病院に行ったり休む事ができないという特性があります。

よってフライト前に病気である事がわかっていたらフライトは考える必要がでてきます。自家用の人はフライトを中止するべきでしょう。

特に腹痛などは直接的に厳しい事になる可能性があるので注意しなければなりません。

また、虫歯に関しても低気圧で激痛になる可能性があります。

medication 薬

病気に続いて薬にも注意しなければいけません。

病気になったからといって薬を飲むのはパイロットとしてやってはいけない事の一つです。

薬の中には眠気を誘発したり上空で変な影響を与えるものがかなり多いです。

処方箋ではなく市販薬であっても飛行において危険な物は多く、薬を飲んでいるときはフライトは止めなければならない事が多いです。

処方箋であってもほとんどの医師は航空作業に対して影響があるのか判断できない事が大半です。よって薬は飲まない方がいいです。

特に

  • 睡眠剤
  • 感冒薬(PL、ダンリッチ)
  • 鎮痛剤(ブスコパン)
  • 抗ヒスタミン薬(レスタミン)
  • 鎮痛消炎剤(インダシン)
  • 麻薬

など、これらはパイロットは服用してはいけません。他にも服用できない薬品はたくさんあります。

飛行機の操縦をしない人であっても眠気を誘う薬などは注意が必要なのではないでしょうか。自分で思っているよりも危険な状態に陥る可能性があると言えます。

stress ストレス

過度のストレスというのもフライトにおいては問題となります。このストレスは仕事やフライトの事だけでなくあらゆる事がかかわってきます。

たとえば航空機のインターフェースがおかしくて必要以上のストレスを受けている場合はそれも問題になります。

一方でストレスが少なければいいというものでもありません。

航空機の操縦においてはストレスが少なすぎる場合アンダーロードと呼ばれる状態になってしまって反応が鈍くなったりすることがあります。

適度なストレス状態が維持できるようにしなければなりません。

日本においてはストレス過多の人が多いと思います。適度にやってください

alchol アルコール

車と同じく航空機においても酒気帯びでの操縦が航空法により禁止されています。

旅客機の操縦士は社内規定でさらに厳しい飲酒規定を敷いている事が多いようです。

一方で自家用や事業用ではアルコールの影響が残っている間しか法律で操縦を禁止していないため、解釈に幅が出てしまいます。

自分のフライトに影響を及ぼさないような飲酒が大切です。

fatigue 疲労

あらゆる疲労はフライト時に悪影響を与えるので疲労をためないように工夫する必要があります。

当然フライト以外の疲労に関しても同じです。人間は慢性的な疲労にも急性の疲労にも弱いものです。

適切な疲労度のコントロールが求められています。

また、飛行自体から受ける航空疲労というものも存在しています。振動や音、Gなどの刺激によって疲労が溜まることもあります。

横風やタービュランスなどを受けると腰に負担がかかる事もあります。人間が生きる通常の環境とは違う事を自覚する必要があります。

疲労により判断力や集中力が低下していると感じる時は注意が必要といえます。

emotion 感情

精神的な疲労などもフライトに影響します。

重大なイベントがあった時にも人間は精神的な影響を受けており、フライトしたときにいつもと違う感覚になるかもしれません。

また、別の事を考えていて管制指示に反応できなくなったりという事もあります。

いずれにしても心ここにあらずという状況では問題があります。

食事について

最後のemotion に関しては最近eatingとして解説している事もあります。

食事に関しては、前述の病気の元となるようなものを控える必要があります。

例えば生牡蛎のような食事をして腹痛となってしまっては大変です。

特に小型機のようなパイロットが一人でトイレも無いような状況では恐ろしい事態となるでしょう。場合によってはフライト計画を変更して行先を変えなければならなくなるかもしれません。

まとめ

Im Safe と覚えやすくまとまっているチェックリストですが、使わなければ意味がありません。

何かをしようとしているときにIm safeかどうか、後々悪影響を及ぼさないか考えて行動するとより健康に過ごせると考えています。

パイロットでない人もぜひこれらのチェックリストを確認して、より高いパフォーマンスを発揮できるように過ごしてみてください。

もっと詳しくパイロットの健康管理について学ぶには以下の本がおすすめです。(絶版のようです)

航空医学
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  • : 土屋正興, 東謙一
  • 単行本
  • 出版日 : 2008/07/01
  • メーカー : 鳳文書林出版販売
  • 商品ランキング : 1,331,867 位

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